手のひらを返すヒト

むかーし、輸入雑貨を販売するお店からホームページを作り直したいと見積依頼があった。ブログを利用して簡単に更新できるようにしたいという事だった。

本業はプログラム開発なので、畑違いの仕事依頼だ。ただ法人化しているお店でゆくゆくはネット上で販売するシステムも作りたいということなので、引き受けることにした。

当時、MovableTypeが全盛で、Wordpressも出始めていた頃だっただろうか。ブログの導入・カスタマイズを専門にやってる業者の料金をネットで調べ、それに負けない価格で見積もりを提示した。専門外なので当然赤字である。顧客獲得と将来への投資と考えての価格設定だった。

 

担当者はその会社のパソコン・システム関連を一手に引き受け、経営者の片腕として転職してきたばかりで張り切っていた。

そして、少しばかり偉そうだった。

「サイトを作る業者なんかいくらでもいる」

「この値段で上にあげたら俺の顔が潰れる、もっと安くしてくれ」

と。

 

ぼくは価格交渉が嫌いなので、最初からギリギリの価格で提示することにしている。あらかじめそれを伝えた上で。

にも関わらず、値切ってきたが、ギリギリの価格であることをもう一度伝えて拒否した。結局受注には至らなかった。

 

その後も何度かIT関連の見積もりの相談を受けたが、どこか上から目線なのも、結局仕事にならないのも、ずっと変わらなかった。

 

しばらく連絡が無い日が続き、すっかり彼の存在を忘れかけていた頃に電話がかかってきた。

「大変ご無沙汰しております。お元気でしょうか」

やけにうやうやしい。

近く会社を辞めてフリーになるので、仕事があれば是非声をかけて欲しい、ということだった。

 

世の中を渡っていくには、このくらい厚顔のほうがいいのかもしれない。

ぼくには無理だが。

 

彼と仕事をすることはその後もなかった。